介護施設が外国人を採用する方法|4つの採用ルート比較と実務手順・費用の目安
公開日:2026年8月9日
最終更新日:2026年8月9日
介護施設が外国人材を受け入れる代表的な制度には、特定技能1号・技能実習・在留資格「介護」・EPAの4つがあります。
本記事では、4制度の違いと自施設に合う選び方、採用から受け入れまでの手順、費用の目安までを、採用担当者向けに実務ベースで整理します。

監修者
武藤 拓矢合同会社エドミール 代表社員
資格:申請等取次者 / 外国人雇用管理主任者
2018年から外国人人材領域に携わり、技能実習・特定技能・技人国の全領域で延べ600名以上の採用から定着までを支援。2019年に登録支援機関「合同会社エドミール」を設立し、介護分野を中心に外国人材の導入・定着を伴走。商工会議所主催の外国人活用セミナーにも登壇。
目次
外国人介護人材を受け入れる代表的な4制度とは
外国人介護人材を受け入れる代表的な制度には特定技能1号・技能実習・在留資格「介護」・EPAの4つがあり、要件や在留期間、転職の可否が異なります。このほか、永住者や日本人の配偶者等など就労活動に制限のない在留資格を持つ人を、これらの制度を使わずに採用する場合もあります。
4制度は「制度の目的」「在留期間」「転職の可否」が大きく異なり、比較すると次のようになります。
| 項目 | 特定技能1号 | 技能実習 | 在留資格「介護」 | EPA |
|---|---|---|---|---|
| 制度の目的 | 人手不足分野の即戦力確保 | 技能移転(国際貢献) | 専門職としての就労 | 二国間の経済連携強化 |
| 在留期間 | 通算5年 | 最長5年 | 更新回数の上限なし | 資格取得前は原則4年 |
| 日本語要件(入国時) | N4以上+介護日本語評価試験 | N4程度 | 要件なし(介護福祉士資格が前提) | N3〜N5(国別) |
| 転職・転籍 | 同一業務区分内で可 | 原則不可 | 可 | 資格取得前は原則不可 |
特定技能1号「介護」
特定技能1号は、原則として介護技能評価試験と所定の日本語試験に合格した外国人が即戦力として働ける在留資格です。介護職種の技能実習2号を良好に修了した人など、要件に応じて試験が免除される場合もあります。
在留期間は通算5年で、受け入れ施設は生活オリエンテーションや日本語学習の機会提供などの支援計画を作成し、自ら実施するか登録支援機関へ委託して行います。制度の詳しい要件は特定技能とは?制度の基本から1号2号の違い・技能実習との比較までわかりやすく解説で解説しています。
技能実習(育成就労制度は2027年4月1日施行)
技能実習は技能移転を目的とした制度で、最長5年間従事できます。
団体監理型では監理団体を通じて受け入れ、実習先の変更は原則制限されますが、やむを得ない事情がある場合などには変更できることがあります。後継の育成就労制度は2027年4月1日に施行され、施行後は経過措置のもとで技能実習からの移行が進む見込みです。
在留資格「介護」
在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を持つ外国人向けの専門職ビザです。
更新回数の上限がなく実質的に長期雇用でき、家族帯同も認められています。訪問系サービスにも制限なく従事できるため、幹部候補として迎えたい施設に向いています。
EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者
EPAは、インドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済連携協定に基づき、介護福祉士の資格取得を目指す候補者を受け入れる制度です。
国際厚生事業団(JICWELS)を通じて受け入れ、資格取得前は業務範囲や転籍に制限があります。各制度の背景やメリット・課題の全体像は外国人介護人材の受け入れガイドで解説しています。
自施設に合う採用ルートの選び方
早く人手を確保したいなら特定技能1号、同種業務経験など技能実習の要件を満たす人材を自施設で育てたいなら技能実習が向いています。長期の幹部候補として迎えたいなら在留資格「介護」が向いています。
複数のルートを組み合わせることも可能です。特定技能1号で即戦力を確保しながら技能実習で若手を育て、将来的に在留資格「介護」への移行を目指す進め方もできます。
| 自施設の状況・希望 | おすすめのルート |
|---|---|
| とにかく早く人手を確保したい | 特定技能1号(試験合格者を採用) |
| 要件を満たす人材を自施設の方針で計画的に育てたい | 技能実習(将来的には育成就労) |
| 国家資格者を長期・幹部候補として迎えたい | 在留資格「介護」 |
| 初期費用をできるだけ抑えて始めたい | 技能実習(監理団体経由で紹介料を抑えやすい) |
| 訪問介護でも受け入れたい | 特定技能1号・技能実習(いずれも初任者研修課程等の修了、原則1年以上の実務経験、受入事業所の体制整備等が条件)または在留資格「介護」 |
特定技能1号は2025年4月21日、技能実習は同年4月1日から、訪問系サービスへの従事が条件付きで認められています。
共通の主な条件は、介護職員初任者研修課程等の修了と原則1年以上の実務経験に加え、研修・同行訓練や相談窓口の設置など、受入事業所側の体制整備です。在留資格「介護」の有資格者は、この改正以前から訪問系サービスに従事できます。
外国人介護士を採用するメリット・デメリット
最大のメリットは人手不足の解消と現場の多様化、デメリットは初期費用と生活・日本語支援の工数です。
メリット
最大のメリットは、夜勤や土日勤務にも対応できる人員を確保し、現場の人手不足を解消できることです。
- 夜勤・土日シフトを含めた人員体制の安定
- 異なる視点や工夫による業務改善のきっかけ
- 利用者との新しいコミュニケーションの機会
特に人手不足が深刻な地方や中小規模の施設では、シフトの穴を埋められる人材を確保できること自体が、既存スタッフの負担軽減に直結します。
デメリットと対策
主なデメリットは初期費用と日本語・生活支援の負担です。特定技能1号では、受入れ機関が行う法定支援の全部または一部を登録支援機関へ委託でき、施設側の負担を軽減できる場合があります。
ほかの制度では、それぞれの受入れ・支援体制を確認する必要があります。
- 初期費用・月額委託費が発生する
- 日本語教育や生活支援の体制構築が必要になる
- 文化・言語の違いによるコミュニケーションの壁が生じることがある
特に生活支援は、住居契約や行政手続きの同行など施設の本業と離れた業務が多く、対応できる担当者を先に決めておかないと現場任せになりがちです。
採用から受け入れまでの流れ・スケジュール
特定技能1号を海外から受け入れる場合、方針決定から在留資格認定証明書の交付・渡航準備まで、入社希望日のおおむね半年前からの着手が目安です。
- 採用ルート・方針の決定
- 特定技能分野別協議会への加入手続き(在留申請の前に必須)
- 人材の選考
- 雇用契約の締結と支援計画の作成
- 在留資格認定証明書の交付申請(処理期間は申請時期や案件により異なるため、出入国在留管理庁の最新の在留審査処理期間を確認)
- 渡航・入国と受け入れ開始
技能実習からの移行や国内在住者の採用では、渡航準備が不要な分、上記より短い期間で進められる場合もあります。
着手前に次の4点を固めておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
- 受け入れ予算の確保
- 現場の指導担当者(OJT役)の決定
- 住居・生活支援の手配方針
- 日本語学習を続けられる環境
採用・受け入れにかかる費用の目安
特定技能「介護」で1人受け入れる場合、初期費用はおおむね10〜110万円、登録支援機関への月額委託費は2〜3万円程度が目安です。
海外から新規に採用する場合は渡航費や住居準備費が加わり、技能実習からの移行や国内在住者の採用に比べて初期費用が高くなりやすい傾向があります。費用の内訳や採用ルート別の差は特定技能「介護」の費用相場で詳しく解説しています。
活用できる補助金・支援制度
多言語対応機器の導入や日本語学習支援などにかかる費用の一部について、国や自治体が補助する事業を用意している場合があります。
制度の内容や対象は年度により変わるため、最新情報は厚生労働省や自治体の窓口で確認することをおすすめします。
採用でよくある失敗・注意点
採用でよくある失敗は2つに集約されます。採用しやすさだけでルートを決めて在留期限や支援工数のズレに後から気づくことと、協議会への加入時期を誤ることです。
- 「採用しやすさ」だけでルートを選び、在留期限や資格取得の難易度とのミスマッチに後で気づく
- 特定技能で受け入れる際、在留申請の前に協議会への加入手続きを済ませていない
- 指導担当者や日本語学習環境、生活支援体制を採用決定後に検討し始め、準備が間に合わない
- 何年働いてもらう想定か、誰が教育・支援を担うかを決めずに採用を進めてしまう
- 受け入れ人数の上限や配置基準への算入可否を確認せず、採用計画を先に固めてしまう
採用前に想定しておきたいのは、在留資格の違いだけでなく「何年働いてもらう想定か」「教育・生活支援を誰が担うか」の2点です。この2点を採用活動と同時に社内で固めておくと、協議会加入や書類準備などの実務を進めやすくなります。
ルート選定を制度比較だけで終わらせず、教育・支援の体制まで一体で計画することが、後戻りのない受け入れにつながります。
よくある質問
- 外国人介護士の採用で最初に決めるべきことは何ですか
- まず「即戦力を確保したいのか、時間をかけて育てたいのか」を明確にし、それに合う採用ルートを選ぶことです。特定技能1号なら試験合格者を即戦力として、技能実習なら一定の要件を満たす人材を自施設の方針で育てられます。
- 特定技能の協議会にはいつ加入すればよいですか
- 地方出入国在留管理局へ在留諸申請を行う前に、介護分野における特定技能協議会の構成員になる必要があります。入会費・年会費は無料で、申請から発行まで通常2週間程度です。
- 訪問介護でも外国人材を受け入れられますか
- 在留資格「介護」の有資格者は以前から訪問系サービスに従事できます。技能実習は2025年4月1日から、特定技能は同年4月21日から、条件付きで訪問系サービスに従事できるようになりました。条件は、初任者研修課程等の修了・原則1年以上の実務経験・受入事業所側の体制整備などです。
- 技能実習はもう使えないのですか
- 現時点では引き続き利用できます。後継の育成就労制度は2027年4月1日に施行され、施行後は経過措置のもとで技能実習からの移行が進む見込みです。これから新規に受け入れる場合は、育成就労への移行も視野に入れて検討してください。
- 複数のルートを併用してもよいですか
- 併用は可能です。特定技能1号で即戦力を確保しながら技能実習(または育成就労)で若手を育てるという組み合わせは、人手の確保と長期の定着を両立させる進め方の一つです。
まとめ
4つのルートは対象者・在留期間・転職の可否が異なるため、自施設が「早く人手を確保したいのか」「時間をかけて育てたいのか」を軸に選びます。協議会加入のタイミングや受け入れ体制の準備を後回しにしないことが、失敗を避けるポイントになります。
制度の比較だけで終わらせず、費用の目安や受け入れ体制まで見通しを立ててから採用活動を始めると、後戻りの少ない受け入れにつながります。
- 受け入れ直前の実務チェックや逆算スケジュール:外国人介護士の受け入れ準備チェックリスト
- 採用後に長く働いてもらうための工夫:外国人介護士の定着率を上げる方法




