外国人介護士の採用後に定着率を上げる方法|離職理由と対策
公開日:2026年7月12日
最終更新日:2026年8月9日
特定技能外国人の自己都合離職率は10.6%で、介護職員全体の離職率12.4%と比べて特に高い水準ではありません。
一方で、離職理由の上位は「介護以外の職種への転職」と「賃金への不満」です。ここでは、公表データで見える実態と、施設側で定着率を上げる取り組み、登録支援機関との役割分担を整理します。

監修者
武藤 拓矢合同会社エドミール 代表社員
資格:申請等取次者 / 外国人雇用管理主任者
2018年から外国人人材領域に携わり、技能実習・特定技能・技人国の全領域で延べ600名以上の採用から定着までを支援。2019年に登録支援機関「合同会社エドミール」を設立し、介護分野を中心に外国人材の導入・定着を伴走。商工会議所主催の外国人活用セミナーにも登壇。
目次
外国人介護士の離職率・離職理由の実態
特定技能外国人の自己都合離職率は10.6%で、介護職員全体の離職率12.4%と比べて特に高い水準ではありません。
出入国在留管理庁の有識者会議資料では制度開始から2022年11月までの自己都合離職率が10.6%、介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査では訪問介護員・介護職員を合わせた離職率が12.4%です。算出期間や定義が異なるため単純比較には注意が必要ですが、「外国人だから一律に定着しにくい」とは言い切れません。
離職理由の内訳
全国老人福祉施設協議会が2025年1〜2月に実施した令和6年度外国人介護人材定着度調査(対象824施設、回答192施設、外国人材1,177人)では、過去5年間の離職理由は次のとおりです。
| 離職理由 | 割合(過去5年間) |
|---|---|
| 介護以外の職種への転職 | 52.1% |
| 賃金への不満 | 36.3% |
| 病気のため | 26.8% |
| 他の施設への転職 | 22.3% |
| 介護福祉士国家試験に合格できず帰国 | 14.3% |
| 都市部で働きたい | 11.3% |
介護業務そのものへの不満より、待遇・将来の見通し・健康面・職場選びが離職の引き金になりやすい傾向がうかがえます。
定着対策は「辞めさせない」だけではなく、本人の不安や希望を早い段階で把握する設計が重要です。
今後、離職が増える可能性もある
現時点の離職率が低く見える背景には、在留資格の制約で転職先が限られやすい事情もあります。
特定技能「介護」の受入れが進み、育成就労への移行などで選択肢が広がると、施設間・職種間の移動は増えやすくなります。数字の安心感だけで終わらせず、入職後の生活支援・職場コミュニケーション・キャリア提示を先に整えておく必要があります。
離職・低い定着率が採用コストと施設経営に与える影響
離職が発生すると、採用時に行った生活立ち上げ支援や研修に加えて、再募集・再研修の負担が生じます。登録支援機関へ支援を委託している場合は、契約内容に応じた支援委託費用も考慮が必要です。
採用計画の段階から定着率を意識しておくことは、単に「辞めさせない」ためだけでなく、再募集にかかる追加負担や、現場が新人教育を繰り返す負担を避ける観点でも重要です。具体的な費用感は受け入れ人数や地域、支援内容によって差があるため、契約中の登録支援機関などに個別に確認することをおすすめします。
定着率を上げる具体的な取り組み
定着率を上げるには、生活基盤の安定、職場コミュニケーション、日本語・業務支援、キャリアパスの提示を組み合わせるのが有効です。
全国老施協の調査では、外国人材が今の職場を良いと感じる要素として、職場内コミュニケーションや相談体制、シフト・休暇の取りやすさが上位に挙がっています。また、回答施設では生活相談・支援、住宅補助、日本語研修・試験対策など、複数分野の定着促進策が実施されています。
定着している施設で重視される職場要因
同調査では、外国人材が今の職場を良いと感じる要素として、職場内コミュニケーションの良さ(66.5%)、悩みや不満を相談できる体制(55.7%)、希望に合わせたシフト(52.5%)、有給休暇の取りやすさ(52.2%)が上位に挙がりました。
給与水準の評価(39.8%)より人間関係や働きやすさが上位に来る点は、現場の優先順位を考える材料になります。
- 生活基盤(住居・行政手続き・相談窓口)を入職前後で途切れさせない
- 日本人スタッフとのコミュニケーションと相談体制を仕組み化する
- やさしい日本語での指示と継続的な日本語・業務支援を用意する
- 介護福祉士取得や在留資格「介護」への道筋を早期に示す
生活面のサポート
住居契約や銀行口座開設、行政手続きへの同行など、生活基盤を整えるサポートは、来日直後の不安を減らす効果があります。
義務的支援の範囲内で対応できる項目も多く、登録支援機関と役割分担しておくと現場の負担を抑えられます。
職場でのコミュニケーションと異文化理解
日本人スタッフとのコミュニケーション不足は、孤立感につながります。メンター役のスタッフを配置する、業務指示をやさしい日本語で伝える、定期的な面談で困りごとを早めに拾うといった対応が有効です。
加えて、宗教・食文化・休暇の取り方など、互いの前提が違う点を施設側が先に学ぶ異文化理解の研修があると、すれ違いを予防しやすくなります。一方通行の指導ではなく、相互理解の場をつくることが長期就労の土台になります。
日本語学習と業務サポート
記録や申し送りでつまずくと、自信を失い離職につながることがあります。入職初期は同行・チェックを厚くし、段階的に独り立ちさせるOJTの設計が有効です。
日本語学習の機会提供は義務的支援にも含まれるため、登録支援機関の学習支援と施設内OJTを連動させると定着しやすいです。
キャリアパスの提示
特定技能「介護」から在留資格「介護」への移行には、介護福祉士国家試験の合格が必要です。
試験対策の支援体制や、資格取得後の待遇の見通しを早い段階で示すと、長期的に働くイメージを持ってもらいやすくなります。離職理由に「試験不合格による帰国」がある点からも、学習支援は採用後の必須施策です。
登録支援機関に依頼できる定着支援の範囲
生活オリエンテーション・相談苦情対応・定期面談は登録支援機関が担いやすく、職場のメンター配置や異文化理解研修は施設側の取り組みが中心です。
義務的支援10項目のうち、生活オリエンテーション・相談苦情対応・定期面談は登録支援機関が直接担いやすく、職場内のメンター配置や異文化理解研修、シフト調整の運用は施設側の取り組みが中心になります。
- 生活相談と職場相談の連携先を事前に決める
- 定期面談で出た課題を施設側のメンターへ共有する
- 施設で担う研修・シフト運用と、登録支援機関の義務的支援を契約時に書き分ける
支援内容の比較観点は登録支援機関の選び方、介護分野の実績を見る場合は介護向け登録支援機関のおすすめ比較も参考にしてください。
よくある質問
- 特定技能の外国人介護士の離職率は日本人職員より高いですか
- 特定技能外国人の自己都合離職率は10.6%です(出入国在留管理庁の有識者会議資料)。介護労働安定センターの調査による介護職全体の離職率12.4%と比べても、特に高いわけではありません。ただし施設ごとの支援体制によって差が出ます。
- 定着支援は登録支援機関に任せておけば十分ですか
- 義務的支援だけでは、職場内の人間関係やキャリア形成までは対応しきれません。施設側の受け入れ体制とあわせて整えることが定着率向上につながります。
- 離職の兆候はどこで気づけますか
- 定期面談での表情や発言の変化、遅刻・欠勤の増加、同僚との会話が減るといった様子が早期のサインになることがあります。日常的な声かけの中で気づけるようにしておくとよいでしょう。
- 離職は採用コストや再募集にどの程度影響しますか
- 離職後に新たな人材を受け入れる場合は、再募集や研修、生活立ち上げ支援などの負担が生じます。具体的な金額は受け入れ人数や地域、支援内容によって異なるため、契約中の登録支援機関などに個別に確認することをおすすめします。
まとめ
外国人介護士の定着率向上は、離職理由に対応した生活・職場・キャリア支援と、登録支援機関との役割分担で進めるのが実務的です。
公表データでは特定技能の自己都合離職率は介護職員全体と比べて特に高くありません。それでも、介護以外への転職や賃金への不満が上位に来る以上、生活面のサポート、職場でのコミュニケーション、日本語・業務支援、キャリアパスの提示を組み合わせることが定着率の向上につながります。
- 生活・職場・キャリアの支援をセットで設計する
- 登録支援機関と施設の役割を事前にすり合わせる
受け入れ全体の流れは外国人介護人材の受け入れガイド、費用面は特定技能「介護」の費用相場で解説しています。定着支援の体制についてのご相談は無料相談から承っています。




